【筋膜と筋肉】筋膜の硬さが筋肉のコリやからだの痛みを引き起こすことがある

今回は、筋膜の硬さと筋肉のコリやからだの痛みの関係についてお伝えしていきます。

マッサージやストレッチを受けても、なかなか解消しないコリ感や体の痛みに悩んでいませんか?

そんな方は、筋膜が原因となっているケースがあります。

筋膜とは簡単にいうと、筋肉を包んでいる膜で、筋肉のほかにも骨や、内臓、血管、神経など、

あらゆるものを包んでいます。

筋膜は、長時間の同じ姿勢、筋肉の使いすぎによって、また、運動不足や生活習慣が原因で硬くこわばってきます。

そのように硬くなってしまった筋膜は、

慢性的なコリや痛みの原因になると考えられています。

筋膜の基本的な構造と役割

筋膜というのは、皮膚の下に存在している、筋肉を包んでいる膜です。

体表に近いところでは、皮下脂肪(皮下組織)と一体化しており、

全部で5つの種類があります。

体表から順に、

浅筋膜→深筋膜→筋外膜(筋上膜)→筋周膜→筋内膜

という順番で存在しています。

これら5つの筋膜をすべて総括して「筋膜」という一言で表されます。

そのうち、筋膜リリースの対象となる部分は、

「浅筋膜(せんきんまく)」と「深筋膜(しんきんまく)」です。

次の項目から、浅筋膜と深筋膜の役割と特徴についてお伝えします。

浅筋膜(せんきんまく)の役割と特徴

皮膚のすぐ下にあって指でもんだりすると痛みを感じる部分です。

皮膚がスムーズに動くようにし、外力から筋肉を守るクッションの役割を果たします。 

深筋膜の役割と特徴

皮下脂肪と筋肉の間にあり、グリグリと圧をかけたときに痛みを感じる部分です。

個々の筋肉を包み、組織同士の摩擦を減らし、筋肉が収縮した力を効率的に骨へ伝達する役割を果たします。

深筋膜は皮下脂肪と筋肉の間にあり、グリグリと圧をかけたときに痛みを感じる部分です。

個々の筋肉を包み、組織同士の摩擦を減らし、筋肉が収縮した力を効率的に骨へ伝達する役割を果たします。

深筋膜は三層構造

C. Stecco(2011)が明らかにしたように、深筋膜は、三層構造でできています。

つまり、3枚の筋膜が重なって、1枚の筋膜を構成しています。

それぞれの筋膜はシートのように1枚ずつ線維(コラーゲン繊維というタンパク質)の方向が異なっており、縦、横、ななめ、に分かれています。

そのためそれぞれ動く方向も異なるため、複雑な動きにも対応することができます。

また、3枚のシートが重なった様子から深筋膜の形状は網目のように見えます。

深筋膜は網目状の構造をしている

深筋膜は3枚の膜が1枚となって、網目状の形状をしています。

顕微鏡でみた筋線維▼

引用:関節可動域制限―病態の理解と治療の考え方 

深筋膜は、コラーゲン繊維というタンパク質で構成されています。

コラーゲン繊維は硬いので、伸びたり縮んだりすることがほとんどできません。

しかし、筋膜の線維の配列を変化させることで、伸ばされた方向へ長さを変えることができます。

このように配列を平行に変化させることで、筋膜の長さを変化させるしくみがあります。

筋膜のネットのような構造は、筋線維を束ねて筋肉の線維の動きを連動させる役割があります。

深筋膜とヒアルロン酸

筋膜と筋膜の間には、ヒアルロン酸の層があります、

ヒアルロン酸はさらさらしているので、

シート同士の摩擦を減らし、自由に動けるようにするための潤滑剤の働きをしています。

しかし、筋膜に動きがない状態(例えば、同じ姿勢で過ごすことが多いなど)では、ヒアルロン酸の循環が滞ってしまいます※。

すると、ヒアルロン酸は、粘り気を帯びるようになり、

結果として潤滑油としての働きが低下してしまいます。※参考→ Langevin(2011)

このようにヒアルロン酸の粘度が増すと筋膜同士の滑りが失われてしまい(癒着し)筋膜の動きが低下することによって痛みやコリを引き起こすと考えられています。※

※参考→Langevin(2021)

筋肉と筋膜をつなぐ支帯線維

筋肉と筋膜は、支帯線維という縦糸でつながれています。

正常な状態であれば、下図のように筋肉と筋膜の間をまっすぐつないでいます。

しかし、筋膜が硬くこわばっている状態では、筋膜に支帯線維が引っ張られてしまうので支帯線維に乱れが生じます。

支帯線維に乱れが生じた状態▼

筋肉の動きと筋膜の動きは、支帯線維によって連携されているので、

支帯線維が乱れてしまうと、筋膜と筋肉の動きが悪くなってしまいます。

これが、筋肉がこわばってしまう状態を引き起こします。

深筋膜は全身をつなぐ「第二の骨格」

深筋膜が包んでいるのは、全身の筋肉だけではありません。骨や内臓、血管、神経など、あらゆるものを包み込み、それぞれがあるべき場所にとどまれるように支えています。

このように、体の構造を維持することから「第二の骨格」と呼ばれています。

また、深筋膜は、1枚の全身タイツのように体全体を包み、全身をつないでいます。

そして、筋膜には特定のつながりがあり、一部の筋膜の異常は、離れた部位に存在する筋膜、そして周辺の組織に影響を及ぼすと考えられています。

筋膜同士のつながりによって、筋肉から筋肉への力の伝達を行っています。

筋膜のつながりについては、トーマス・W・マイヤース(Thomas W. Myers)氏が提唱した、アナトミートレインが有名です。

このような深筋膜のつながりは、人の骨格を支え、円滑な動きを実現させる一方で、

1カ所の部位で筋膜の異常が発生した場合、つながっている部分にある筋膜、そして筋膜周囲にまで問題が生じることがあります。

このような側面から、筋膜の問題によって慢性的なコリや痛みの原因になることがあります。


参考:ファシア機能解剖学的・生理学的特性とリハビリテーションにおける 臨床的意義 ―構造からシステムへのパラダイムシフトと最新の治療戦略―

筋膜の硬さを解消するためには

筋膜の硬さを解消するには、「筋膜リリース」が効果的です。

筋膜リリースとは、筋膜を圧迫しながらストレッチを行うことで、硬くなった筋膜をほぐす施術です。

例えば、前腕の筋膜であれば、皮膚の上から圧迫をしたまま、グーパーを繰り返したり、

てのひらをストレッチするような感じです。

筋膜リリースとマッサージの違い

筋膜リリースのとマッサージの大きな違いは、施術の対象と、目的です。

マッサージは筋肉そのものを施術の対象として、もみほぐしを行うことで血行促進や疲労回復を行います。

対して、筋膜リリースが対象としているのは、筋肉を包む筋膜です。

筋膜リリースは筋肉をもみほぐすマッサージと異なり、筋膜をほぐす、筋膜をのばす、筋膜と筋肉の間の支帯線維の配列を整えるというような施術になります。

マッサージが、心地よさ、リラックス効果、回復をといった一時的な問題解決を目的とするのに対して、

筋膜リリースは、長年続く痛み、慢性的なコリ、体の柔軟性の改善といった、根本的な問題解決を目的としています。

これは、どちらが良いと言う話ではなく、

受けられる方の求めに応じて、柔軟に使い分ける必要があります。

例えば、長年の肩こりに悩んでいる人がいらっしゃった場合、

たしかに、筋膜リリースを行うことで、肩周りの動きが良くなり、

筋肉自体も伸びやすくなります。

肩こりの根本的な解決としては、この段階で目的は達成されているのですが、

肩こりのコリ感は筋肉の内部で生じているため、筋膜リリースだけではなかなか解消しない場合があります。

そのような場合には、筋膜リリースで筋肉や周辺組織の動きが良くした状態を作った上で、

もみほぐしもセットで行うほうが、コリ感の解消と根本的な解決の両立ができると考えられます。

筋膜リリースとストレッチの違い

筋膜リリースとストレッチは、一部共通していることがあります。

それは筋膜が伸ばされることです。

ストレッチは筋肉の線維の方向に沿って、筋膜も一緒に伸ばされるため

柔軟性の根本的な改善につながります。

一方で筋膜リリースと、ストレッチで異なるのは、

筋膜に対するアプローチの仕方です。

筋膜リリースでは、体表から手で筋膜を圧迫しながら、ストレッチをかけていきます。

筋膜を圧迫した状態で中の筋肉を動かすことで、支帯線維の配列を整えることができるため、

筋膜と筋肉の双方を柔軟にするためには、筋膜リリースのほうが効率的です。

まとめ

筋膜リリースは、筋肉をつつんでいる膜に対してアプローチを行う施術になります。筋膜が柔軟になることで、筋肉も本来の柔軟性を取り戻すことができます。

マッサージやストレッチと似ている部分、共通する部分がある一方で、

体のコリや痛みの根本解決には、筋膜リリースが役立ちます。

また、マッサージやストレッチについては、筋膜リリースと併用して行うことで

相乗効果を得ることができるので組み合わせて行うことを推奨しています。

体のコリや、慢性的な痛みなど、お身体の症状で気になる方はお気軽にご相談ください。