スクワットの深さで大臀筋の筋肥大はどう変わる?研究論文と解剖学からプロが徹底解説

「スクワットはお尻を効かせるには深くしゃがむべき?ハーフでもいい?」

今回の記事では、このような疑問について科学的根拠と体の構造から解説していきます!

こんな人にオススメです▼

  • お尻の筋肉を効率よく育てていきたい人
  • スクワットの深さをどのように使い分けると良いか知りたい人
  • 異なるスクワットの深さが下半身の筋肉に与える影響を知りたい人

この記事の信頼性:
国家資格(鍼灸師)と国際トレーナー資格(NSCA-CPT)を持つ筆者が、科学的根拠と体の構造から解説します。


1. 【結論】大臀筋を最大に筋肥大させるスクワットの「深さ」とは?

結論からお伝えすると、「フルスクワット(またはディープスクワット)」が最も大臀筋(お尻の筋肉)の筋肥大に効果的です。

また、深くしゃがむことで、内ももの筋肉である「大内転筋」にも効率よく刺激を与えることができます。
次の項目では、なぜ深くしゃがむことがこのようなメリットをもたらすのか、具体的な論文のデータを元にお伝えしていきます!


2. 論文から紐解く:なぜ深いスクワットはお尻に効くのか?

スクワットの深さによって筋肉の発達にどれほどの差が出るのか。これを科学的に証明した非常に有名な研究があります。

2019年に東京大学の久保氏らによって発表された論文(Kubo et al.)では、健康な男性を対象に「深くしゃがむフルスクワット」と「浅いハーフスクワット」を週2回の頻度で10週間行ってもらい、最新のMRIを使ってトレーニング前後の正確な「筋肉の体積(ボリューム)の変化」を測定しました。

出典: Kubo et al. (2019) Effects of squat training with different depths on lower limb muscle volumes

また、この研究におけるフルスクワットとは、単に太ももが床と平行になるレベルではなく、

完全に膝を伸ばした位置から約140度まで深く曲げ切る『ディープスクワット』に近い深さのことです。

ハーフスクワットとフルスクワットの比較画像▼(久保らの研究内で実践された可動域を元に作成)

その驚きの実験結果をまとめたのが、以下のデータです▼

筋肉の部位フルスクワット(%)ハーフスクワット(%)
大臀筋(お尻)6.72.2
大内転筋(内もも)6.22.7
大腿四頭筋(前もも)4.94.6

グラフを見ていただくと分かる通り、狙う筋肉の部位によって劇的な効果の差が出ることが判明しました。

① 大臀筋(お尻)の成長率は約3倍の差!

お尻の筋肉である大臀筋は、ハーフスクワットでは「+2.2%」の増加にとどまったのに対し、フルスクワットでは「+6.7%」と、なんと約3倍もの高い成長率を記録しました。お尻の引き締めやヒップアップ、バルクアップを狙うのであれば、深くしゃがむフルスクワットが圧倒的に有利であることが分かります。

② 大内転筋(内もも)も2倍以上の効果

太ももの内側にある大内転筋も、ハーフスクワットの「+2.7%」に対して、フルスクワットでは「+6.2%」と2倍以上の発達を見せました。脚を閉じる力や、下半身の安定性を高めるためにも、深さがいかに重要かがデータから一目瞭然です。

③ 【意外な事実】大腿四頭筋(前もも)の発達はほぼ同じ

一方で、太ももの前側にある大腿四頭筋の発達率は、ハーフスクワットの「+4.6%」に対して、フルスクワットが「+4.9%」、と、深さによる差がほとんどありませんでした。
「お尻を狙って深くしゃがむと、前ももまで余計に太くなってしまうのでは?」と心配される方も多いですが、この研究データを見る限り、前ももの発達具合は浅くても深くても変わらないため、安心してお尻を狙って深くしゃがみ込んで大丈夫です。


3. 【解剖学的な理由】なぜ深くしゃがむと「お尻」が劇的に育つのか?

東大の論文データの通り、深くしゃがむことで大臀筋の発達率は3倍に跳ね上がります。では、なぜ深さによってこれほどの差が生まれるのでしょうか。
これを、体の構造を専門とする「鍼灸師の視点(解剖学)」から紐解いていきましょう。ポイントになるのは、「股関節の可動域」と「筋肉にかかる強烈なストレッチ負荷」にあります。

① 大臀筋の役割は「股関節の伸展」

まず、お尻の大部分を占める「大臀筋」は、骨盤や仙骨からスタートし、太もも骨(大腿骨)へと繋がっている非常に大きな筋肉です。
この筋肉の主な働きは、「曲げた股関節を後ろへ伸ばす(股関節の伸展)」という動作です。スクワットで言えば、しゃがんだ状態からお尻の力を使って立ち上がる瞬間に最も強く働きます。

② 深くしゃがむほど「最大伸長」される

ハーフスクワット(膝や股関節が90度程度)の場合、股関節の折りたたみが浅いため、大臀筋はあまり引き伸ばされません。
しかし、お尻を深く落とし込むフルスクワットでは、股関節の屈曲角度が深くなり、大臀筋がこれ以上ないというレベルまで限界近く引き伸ばされます。(この状態を最大伸長といいます)
筋肉は、強く引き伸ばされた状態(ストレッチされた状態)で強い負荷がかかるときに、最も強いエキセントリック収縮(伸張性収縮)を起こし、これが筋肥大を誘発する強力なシグナルとなります。

③ レバレッジ(力学的な不利)が負荷を跳ね上げる

解剖学的・力学的に見ると、股関節が深く曲がった状態(ボトムポジション)は、お尻の筋肉にとって「最も力が発揮しにくい(不利な)姿勢」になります。
力が発揮しにくいということは、逆に言えば、その姿勢から立ち上がるために大臀筋が100%のフルパワーを出して働かなければならないということです。
だからこそ、ハーフスクワットの浅い角度では味わえない強烈な刺激が大臀筋に加わり、結果として「3倍の成果」となって現れるのです。

プロの補足:論文による「ハーフスクワット」の定義の違いに注意!

今回ご紹介した久保氏らの研究では、ハーフスクワットを「膝関節 約90°屈曲」と定義しています。

実は、スポーツ科学の論文や研究によって、この「ハーフ」や「フル」の定義は微妙に異なります。
一般的にジムの現場やSNSなどで「ハーフスクワット」と呼ばれているものは、お尻を少ししか下ろさない、かなり浅いフォーム(クォータースクワットに近いもの)を指しているケースが多々あります。

しかし、今回の研究で前もも(大腿四頭筋)がフルスクワットと同等に発達した「ハーフスクワット」は、太ももが床と平行になる手前までしっかりとしゃがみ込む、比較的深めのフォームのことです。


「浅いスクワットでも前ももが同じように育つんだ!」

と勘違いして、お尻を数センチしか下ろさないような浅すぎるスクワットをしてしまうと、前ももにもお尻にも十分な刺激が入らなくなってしまいます。

実践する際は、上の比較画像を参考に、ハーフであっても「膝の角度が90度になる(太ももが床と並行に近づく)ところ」まではコントロールして下ろすように意識しましょう!


4. 【現場指導の視点】誰もが深くしゃがめば良いわけではない?安全に行う3つの注意点

論文のデータや解剖学的なメカニズムからも、お尻の筋肥大にはフルスクワットがベストであることは間違いありません。
しかし、私がNSCAパーソナルトレーナーや鍼灸師として現場で指導・施術を行う中で、「全員が今すぐフルスクワットをやるべきか」と言われれば、答えはNOです!
なぜなら、十分な柔軟性やコントロール力がないまま無理に深くしゃがむと、お尻が発達するどころか、腰や膝、背中を痛めるリスクが跳ね上がってしまうからです。安全に効果を出すために、必ずチェックしてほしい3つの注意点を解説します。

注意点①:骨盤の後傾(バットウィンク)による腰痛リスク

深くしゃがみ込んだときに、お尻(骨盤)が丸まってコロンと後ろに傾いてしまう現象を「バットウィンク(Butt Wink)」と呼びます。
骨盤が後傾すると、本来はまっすぐ(軽い前弯)保たれるべき腰椎が強制的に丸められてしまいます。この状態でバーベルなどの重荷が上からかかると、椎間板や腰の筋肉に凄まじい負担がかかり、ギックリ腰や椎間板ヘルニアの原因になります。

  • プロの対策: 鏡を横から見たり動画を撮ったりして、骨盤が丸まり始める手前の「フォームが崩れない限界の深さ」を自分のフルスクワットの基準にしましょう。無理に床までしゃがむ必要はありません。フォームを保つことが最優先です!!

注意点②:ハムストリングスや股関節・足首の硬さ

バットウィンクが起きてしまう原因の多くは、骨盤に繋がっている太もも裏の筋肉(ハムストリングス)や股関節、そして足首の硬さにあります。
特に足首(足関節)が硬い人は、深くしゃがむと踵(かかと)が浮いてしまい、バランスを取るために膝が前に出すぎて膝関節を痛めたり、逆に後方にひっくり返りそうになってしまいます。

  • プロの対策: 鍼灸師のコンディショニング視点からアドバイスすると、スクワットの前に足首のストレッチや、ハムストリングス・大臀筋の入念な動的ストレッチをルーティンとして取り入れることが劇的にフォームを改善します。また、踵の下に薄いプレートを敷いたり、ウエイトリフティングシューズを履くのも足首の硬さを補う有効なアプローチです。

足首のストレッチの例▼

足首のストレッチを行う際は、上記の画像を参考に、反動をつけずにじわーっと伸ばし、左右それぞれ20〜30秒ほどキープしてみてください。これをスクワットの前に実践するだけでしゃがみやすさが大きく変わるケースがあります。

注意点③:肩周囲・胸郭の硬さ

肩の関節可動域が小さい方や、胸椎の伸展がうまくできない方は、深く腰を下ろしていくと背中が丸まってしまいます。これも前述の「バットウィンク(Butt Wink)」を引き起こす原因となるケースを現場でも多く目にします。

  • プロの対策: そのような場合は、フォームローラーやハーフポールを用いた胸椎の伸展エクササイズや、キャット&カウのように背骨の動きを柔軟にするエクササイズを取り入れることで姿勢を維持しやすくなります。

キャットカウ▼

  • 初心者へのアドバイス: ただし、バーベルを担ぐバックスクワットに関しては肩関節への負担が大きくなるケースが考えられますので注意が必要です。とくに初心者の方は、深く腰を下ろす感覚を身につけるために、次にご紹介する「ゴブレットスクワット」から慣れていくと良いと思います。

ゴブレットスクワット▼


5. 【補足】自宅でのゴブレットスクワットでもお尻は3倍育つ?

今回ご紹介した論文は、バーベルを背中に担ぐ「バックスクワット」を対象としたものです。では、ダンベルを胸の前で持つ「ゴブレットスクワット」でも同じようにお尻が3倍育つのでしょうか?

結論から言うと、ゴブレットスクワットの場合は、やや前もも(大腿四頭筋)への刺激が強くなり、お尻への刺激はバックスクワットより少しマイルドになります。

なぜなら、ウエイトを前で持つことで上半身が自然と起きるため、股関節の折りたたみが浅くなり、お尻の筋肉(大臀筋)が十分に引き伸ばされにくくなるからです。個人的には、お尻の筋肥大が目的の場合、ゴブレットスクワットは、深くしゃがむ感覚をつかむための練習として取り入れて頂くのが良いと思います。

  • プロからのアドバイス: もし自宅などでゴブレットスクワットをやりつつ、できるだけお尻に効かせたい場合は、単に真下にしゃがむのではなく、「膝がつま先より前に出すぎないよう、椅子に腰掛けるようにお尻を少し後ろに引きながら、可能な限り深く落とし込む」ことを意識してみてください。こうすることで、家トレでも大臀筋の可動域をしっかり確保することができます。

まとめ

最後に本記事のまとめです!

  • 筋肥大・ヒップアップを狙うなら基本は「フルスクワット」が圧倒的におすすめ。
  • ただし、骨盤が丸まってしまう(バットウィンク)ことがないように、怪我をしない可動域・柔軟性で行うことが最優先。
  • 自分の体の硬さに合わせて、事前のストレッチや種目選択(ゴブレットスクワットなど)を使い分ける。

あくまでも大切なのはフォームを維持できる可動域で実践することです。

誤ったフォームで無理に行うよりも、少しずつ練習をしながら徐々に可動域を上げていきましょう!

当ブログでは今後も、国家資格&トレーナーの視点から、科学的根拠に基づいた正しいボディメイク情報を発信します。

次回の記事もお楽しみに!

最後までご覧頂きありがとうございました。

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