腹圧(腹腔内圧)についてわかりやすく解説します!【体幹の安定】

腹圧を高めることが大切だと聞いたことはありませんか。
なんとなく言われている、ぼやっとしたイメージの腹圧(ふくあつ)
ここでは、腹圧(ふくあつ)について解説していきます。
腹圧(ふくあつ)は、腹腔内圧(ふくくうないあつ)とも呼ばれており、
シンプルに言えばお腹の中に発生する圧力のことです。
例えば、コルセットを少しきつめに巻いた状態で
お腹を膨らませるように呼吸をすると、
お腹がコルセットに抵抗するような感じで硬くなるのを感じることができます。
これは腹圧が入っている状態です。
腹圧が弱い状態と腹圧がかかった状態の比較▼※参考①

腰を痛めている人が、コルセットを巻くと腰が楽に感じられるのは、腹圧がちゃんと入っていることで背骨にかかる負担を軽減してくれているからです。
そして、この腹圧というのは、本来であれば無意識レベルに働いてくれているので、健康な人であればコルセットを巻いていなくても自然と腹圧が入ります。
そして、この腹圧というのはさまざまな筋肉によって産み出されています。
具体的に言えば、肋骨より下の部分から骨盤までの空間に存在するインナーマッスルと呼ばれる筋肉で、
主に、横隔膜(おうかくまく)、腹筋群(ふっきんぐん)、骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)、多裂筋(たれつきん)といった筋肉が緊張することで腹圧を作り出しています。
下の図のように、息を吸ったときに肺が膨らんで横隔膜が下がる(収縮した状態)ことでお腹の中の圧力が高くなり、その圧力を逃がさないように、腹筋群など周りの筋肉が一斉に緊張を高めることで腹圧が完成します。
腹圧がかかった状態▼

腹圧とは背骨を守る安全装置
お腹の中に適度な圧があることによって、
私たちは背骨の負担を減らしながら、姿勢を維持し
歩いたり、走ったりすることができます。
また、重い物を持ち上げたり、
前屈みの姿勢になるときは、通常よりも腹圧を高めることによって、背骨にかかる負担を軽減しようとしてくれています。
これは私たちの意識と関係なく、背骨に負担のかかるタイミングで、体が自動的に働いてくれている安全装置のような仕組みです。※参考②
腹圧が背骨を守るしくみ
腹圧が高まることによって、背面の伸展筋群(脊柱起立筋などの背骨を反らしていく筋肉)の働きをサポートしています。
具体的なメカニズムは次の通りです。
例えば、荷物を床から持ち上げるシチュエーションで見てみましょう。

下に置かれた荷物を持ち上げるとき、体は自然とこのような前屈姿勢をとるようになります。
そこで、体はバランスをとるために体幹を伸展方向(背中を反らせる方向)に傾けようとします。

このときに、傾いた姿勢をもとの直立姿勢に戻そうと働く筋肉が、脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)という背筋群です。
この脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)は、背骨を伸展方向に傾ける(背中を反らせる方向)働きのある筋肉の集まりの総称です。

しかし、背筋の力で体を反らしているときに、背骨と背骨の間にある椎間板(クッション性の軟骨)を圧縮するような力が加わるため、背骨に対しての負担が大きくなってしまいます。
とくに、背骨の腰の部分(腰椎)には大きな負担が生じます※参考③
このまま、背筋の力だけで荷物を持ち挙げてしまったら腰を痛めてしまいます。

ここで、腹圧の出番です!
まず、このような前屈姿勢が起こったときには、
腹筋(腹筋群)をはじめ、骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)や多裂筋(たれつきん)といったインナーマッスルが緊張します。
また、腹腔内の容積が減少することで、腹圧が高まった状態が完成します。
これはお腹の中で風船が膨らんでいくような状態です。
この、お腹の中の圧力が増加するにつれて、背骨が縦に伸ばす力が働くため、腰椎への圧縮負荷を減少させることができます。※参考① ※参考③

このように、背骨にかかる負担を軽減することができれば、荷物を持ち上げても安心です。
以上が、腹圧が高まることによって、背面の伸展筋群(脊柱起立筋などの背骨を反らしていく筋肉)の働きをサポートしているメカニズムです。※参考④
腹圧に関わる筋肉
腹圧に関わる主要な筋肉は次の5つです。
- 横隔膜(おうかくまく)
- 腹横筋(ふくおうきん)
- 内腹斜筋(ないふくしゃきん)
- 多裂筋(たれつきん)
- 骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)
これらはすべて、お腹の深部にあるインナーマッスルと呼ばれる筋肉です。
これらの筋肉がバランス良く活動することで、
適切なタイミングで腹圧をかけることができます。
体幹に対してコルセットのような安定感を与えていると言われています。
腹圧を高めるためには筋トレが必須
腹圧を高めるためには、前述の筋肉をバランス良くトレーニングすることが大切です。
実際に、腰痛を持っている人は、これらの筋肉に何らかの異常を抱えているケースが見られることが報告されています。
ケース⑴
腰痛を持っている人は、横隔膜が健常者よりも薄く、また、疲労しやすいという特徴があります。※参考⑤
ケース⑵
腹横筋の働きが低下して、内腹斜筋で働きを代償しているという報告があります。※参考⑥
しかしこのような筋肉の異常は、適切なエクササイズを継続して行うことで、筋肉の厚みを改善させたり機能を回復できることが証明されています。
ここでは腹圧を高める上で優先度が高いと考えられる
腹横筋(ふくおうきん)を効果的にトレーニングできる種目を2種類紹介します。
1つめはドローイン(ドローイング)です。
これは息を吐きながらお腹をへこませるトレーニングです。
腹横筋(ふくおうきん)のエクササイズ▼
2つめはブレーシング(腹圧呼吸)です。
これは、お腹を全方向(おへそ側、横、背中)に空気を膨らませるトレーニングです。
腹横筋(ふくおうきん)と横隔膜(おうかくまく)のエクササイズ▼
本記事の参考文献▼
参考① 医療法人恵誠会 大西病院広報誌ほほえみ
参考② 腹腔内圧が体幹安定性に及ぼす影響
参考③ 靱帯張力と腹腔内圧を考慮した腰椎負荷計算モデルの構築
参考④ 腰痛症における体幹筋の重要性とその測定の臨床的意義
参考⑤ 呼吸機能と体幹,横隔膜の関係性について
参考⑥ 腰痛患者のドローイン動作における腹横筋と内腹斜筋の筋厚変化率
参考⑦ 横隔膜トレーニングによる腰椎安定筋への効果:腰痛における分節安定性の改善に向けた新たな概念
参考⑧ 初回発症の腰痛に対する特定の安定化運動の長期的効果


