中腰での作業によって、腰痛・ギックリ腰(急性腰痛)が起こる理由と対策

今回は、中腰での作業によって、腰痛・ギックリ腰(急性腰痛)が起こる理由をお伝えしていきます。

先にお伝えしたいことは、中腰姿勢そのものが悪いわけでも、中腰姿勢での作業をしてはいけないということでもありません。

中腰姿勢での作業では、長時間の姿勢の維持による筋疲労などに加え、

回旋・前屈・荷重などが加わることで、腰部にかかる力学的負荷が増大し、腰痛やギックリ腰につながる場合があります。

中腰での作業から腰痛・ぎっくり腰が起こるプロセス

中腰姿勢での作業が腰痛・ギックリ腰を引き起こすのは以下のようなプロセスがあると考えられます。



①中腰の姿勢を長時間維持する
腰椎・股関節周囲の筋肉が持続的に活動することで、筋肉内の局所的な酸素状態が低下する可能性があります。
こうした状態が続くことで、筋肉の疲労感やこわばりを感じることがあります。
また、実験研究では、体幹を屈曲した状態で荷物を保持すると、脊柱起立筋の筋疲労と、筋肉内の局所的な酸素状態の低下が確認されています。参考
②脊柱を安定させる筋活動を維持しにくくなる
筋疲労が進むと、脊柱を安定させるための筋活動を効率よく維持することが難しくなる可能性があります。
その結果、脊柱の安定性を保つうえで靭帯や関節包などの受動組織への依存が相対的に大きくなり、これらの組織への負荷が増える可能性があります。
③作業中に前屈・回旋・荷物の持ち上げなどの動作が加わる
筋疲労が蓄積した状態で、前屈・回旋・荷物の持ち上げなどの動作が加わると、腰椎への負荷が一時的に増大する可能性があります。
腰椎には、圧縮・屈曲・せん断・回旋などの負荷が複合的に加わりやすくなります。
④ギックリ腰(急性腰痛)を引き起こす
③のような動作が、筋疲労などが蓄積した状態で加わることで、腰部への力学的負荷が一時的に増大し、
急性腰痛(いわゆるギックリ腰)につながる場合があります。急激な痛みを感じたり、動作が困難になることがあります。
(場合によっては、腰部の靭帯・関節包などの組織が関与している可能性もあります)

※ただし、急性腰痛の原因は一つではなく、筋肉や靭帯、椎間関節、椎間板など、さまざまな要因が関与する可能性があります。

以上のようなプロセスによって、中腰姿勢での作業中にギックリ腰を引き起こす可能性があります。

では、対策についてはどうすれば良いでしょうか。次の項目では対策についてお伝えします。

中腰で作業を行う際に注意したいこと

対策は次の5つです。

① 中腰での姿勢を固定しない

中腰での作業中は、同じ姿勢を固定せず、適度に姿勢を変えることが大切です。

同じ姿勢が続くと、腰椎の角度・位置や同じ筋活動を長時間維持することになり

これが腰への負担を蓄積させる要因となる可能性があります。

そのため、

立つ → 少し歩く → 別の姿勢 → また作業に戻るというように

姿勢を頻繁に変えるのが対策の基本となります。

また、腰椎を過度に伸展・屈曲した状態で長時間固定し続けないことも、腰痛を予防するために重要です。


② 股関節・膝を使う

股関節と膝を適切に使うことも、腰椎への負荷を抑えるうえで重要です。

作業中は軽くお尻を引くように腰を落として膝を曲げておきましょう。

股関節・膝を適切に使うことで、腰椎だけに動作や荷重が集中することを抑えやすくなり、

腰椎の過度な屈曲を抑えることができると考えられます。参考

腰椎を屈曲させた状態では、後方の靭帯(棘上・棘間靭帯など)が伸張されます。

また、荷重が加わった状態では、脊柱起立筋などにも大きな負担がかかることがあります。

腰椎が屈曲すること自体が悪いわけではありませんが、大きな屈曲角度を長時間維持したり、屈曲した状態で荷重や回旋などが重なると、腰部への負荷が増加する可能性があります。


③ 荷物を身体に近づける

これは腰への負担を減らすうえで、とても大切なポイントです。

物体が身体から離れるほど、

物体の重さ × 水平距離によって腰椎にかかる外部モーメントが大きくなります。

例えば10 kgの物を、身体の近くで持つのと、腕を伸ばして持つのでは、腰に要求される筋力がかなり変わります。

そのため、「重い物ほど身体の近くでもつ」ことが基本です。参考


④ 前屈+回旋+荷重を
同時に行うのを避ける

物を持った状態で、身体を前に曲げる+ひねる+持ち上げる

こうした動作が重なると、腰椎には圧縮・屈曲・せん断・回旋などの複合的な負荷が加わりやすくなります。参考

物を持ったまま方向を変える場合は、腰だけをひねるのではなく、足を動かして、身体全体で方向を変えるようにします。

⑤ 体幹・股関節の筋持久力を高める

中腰姿勢を維持するためには、長時間にわたって体幹や股関節まわりを適切に使い続ける能力も重要です。

体幹・股関節周囲を含めた全身の筋力や持久力などを高めることは、

作業中に身体を安定させ、腰部への負荷を分散しやすくする一つの方法と考えられます。

こちらのメタ分析では、継続的な運動習慣によって腰痛の発生リスクが低下することが報告されています。参考

また、運動習慣に加えて、これまでにお伝えしていた①から④までの内容を一緒に行うことが

腰痛の予防・再発リスクの低減に役立つと考えられます。

まとめ

中腰での作業によって、腰痛・ギックリ腰(急性腰痛)が起こる理由は、

単一の原因ではなく、さまざまな要因が複雑に絡み合って起こるとされています。

また、筋肉は長時間同じ姿勢を続けていると、筋疲労や筋のこわばりが生じる可能性があります。

中腰姿勢で荷物を保持するなど、とくに腰回りの筋肉を持続的に使う状況では、

腰の筋肉が疲労しやすく、また、筋肉内の局所的な酸素状態が低下しやすくなる可能性があります。

そのため、立ったり、歩いたりなど、こまめに姿勢を変えることも大切だと思います。

中腰から荷物を持つような場合は特に注意が必要なので、

できるだけ持ち上げる対象物に近づいた状態で行うようにしましょう。

最後に、中腰姿勢そのものが悪いわけではありません。

適切な対策を取り入れながら安全な作業が行えますように、今回の記事が参考になればうれしいです。

最後までご覧頂きありがとうございました。

お問い合わせフォーム

名前
ふりがな
個人情報の取扱に同意します