筋トレで記憶力が向上する!脳内BDNFを増加させるために筋トレを選択する理由

運動を行うことで、記憶が向上することが多くの研究で示されています。
中でも、記憶力に大きく関わるのは、
脳にある海馬と呼ばれる部分です。
海馬は、記憶力にかかわる部分で、ここの機能が衰えてしまうと、
記憶障害や認知症のリスクが高くなってしまうことが知られています。
一方で運動によって筋肉に刺激をあたえることで
脳(海馬)の機能を改善・向上できることがわかっています。
そんな脳の健康に必要な物に、BDNFがあります。
BDNFは脳由来神経栄養因子というタンパク質の一種です。
脳由来とありますが、実際には脳内で産生され脳内で働く「脳内BDNF」と、
筋肉で分泌して身体の代謝機能に関わる「骨格筋BDNF」の2種類に分けられます。
それぞれ整理していきます。
脳内BDNFの働き

脳内BDNFは、経験や、学習、環境の変化に応じて、脳の機能を変化させる能力をもっているため、
脳内BDNFが増加することで次のような働きが期待できます。
脳内BDNFの働き
- 新しい神経細胞の生成を促す(神経新生の促進)
- 神経細胞間の接続を強化することで学習・記憶の定着を促す(シナプス可塑性の向上)
- 酸化ストレスや炎症から脳の神経細胞を守る(神経保護作用)
- ドーパミン・セロトニンなどの神経伝達物質のバランスを整える(神経伝達の最適化)
- 記憶力・注意力・判断力・学習能力の向上に貢献する(認知機能の改善)
上記のように、脳内BDNFは脳の健康に重要な役割を持っています。
脳内BDNFレベルが低下(数が減少)してしまうと、
うつ病・アルツハイマー・パーキンソン病などの神経変性疾患と関連することが明らかになっています。
脳内BDNFを増やすことでこれらのリスクを低減できます。※参考
そんな脳内BDNFは運動によって数を増やすことができるため、
運動を行うことが脳の健康作りに役立つと言われています。
筋肉由来BDNF(マイオカインの一種)の働き

筋肉由来BDNFは、筋肉を動かすことで筋肉(筋肉細胞)から産生されます。
筋肉由来BDNFが増加することで次のような働きが期待できます。
筋肉由来BDNFの働き
- 脂肪燃焼の促進(脂肪酸酸化の促進)
- インスリンに頼らず血糖値を下げる(糖代謝の改善)
- 細胞内のエネルギー産生を増やして疲れにくくする(ミトコンドリアの新生)
筋肉由来BDNFはこのような代謝の向上に関わります。
『筋肉由来BDNF』は、いわば“脂肪燃焼の現場監督”です。
運動によってこの監督が呼び出されると、筋肉細胞の中にある脂肪燃焼スイッチ(AMPKというタンパク質)を直接プッシュして
細胞の発電所であるミトコンドリアの扉を全開にして、脂肪をエネルギーとして燃やし始めます。
同時に、血中の糖分も効率よくエネルギーに変えてくれるため、
太りにくく血糖値の上昇しにくい『最強の代謝特性』を体に授けてくれるのです。
先ほどの脳内BDNFとは異なり、働きは代謝に関わる物が中心です。
では、運動をすることと、脳内BDNFが増加することは
どのような関係があるのでしょうか?
筋肉由来BDNFが脳内で使われるわけではない

運動すると脳の栄養(BDNF)が増えると言いますが、筋肉で作られたBDNFが直接脳へ送り込まれるわけではありません。
ここについては、当初、私も誤解しておりました。
そもそも、筋肉で作られたBDNFは脳へ移動することはありません。
重要なのは、筋肉を動かすことで生まれる『FNDC5』というタンパク質が増加することです。
『FNDC5』もまた、タンパク質の一種で、イリシンというホルモンの前駆体です。
『FNDC5』は『イリシン(アイリシン)』という若返りホルモンに変身して脳へ旅立ちます。
イリシンは、血流に乗って脳へ届き、脳内のBDNFを増やす強力なスイッチ(トリガー)になります。
以上の流れから、運動することで(筋肉を動かすことで)結果的に脳内BDNFが増加するという一連の流れが発生します。
そのため、運動をすると脳内BDNFが増加すると言われているのです。
BDNFを増加させるために「筋トレ」を選択する理由

これまでの常識では、脳内BDNFを増やすために効果的とされているのは、20分程度のウォーキングやランニングといった「有酸素運動」です。※参考
しかし、近年の研究デザインを変化させた実験によって、
筋トレがBDNFの増加に役立つ可能性がでてきました。
筋トレを、70%RM以上の負荷(ややきついと感じる負荷)をかけて行うことで、
有酸素運動に匹敵するレベルのBDNFの産生が促されるようです。※参考① 参考②
ただ、ここまでの話ですとBDNFの増加のために、
あえて筋トレを候補に挙げる理由にはなりません。
鍵となるのは、次の2つです。
1つめは先ほど登場した『FNDC5』というタンパク質(イリシンというホルモンの前駆体)
2つめは「乳酸」です。
筋トレによって筋肉量が増加することによって
結果的に『FNDC5』も増加されます。
『FNDC5』はイリシンに変身して脳内BDNFを増やすためのトリガー(脳内BDNFを増やすように命令する)なので
筋肉量が増加することで、脳内BDNFが増加していきます。
そして、もう1つは「乳酸」です。
かつては疲労物質として誤解されていた乳酸ですが、
最新の脳科学・スポーツ科学では「筋肉から脳へ送られる、脳のエネルギー+BDNFを増加させるシグナル物質」として知られています。※参考
筋肉が作った乳酸は脳内へ直接入ることができるため、脳内BDNFを増やすためのスイッチを可動させることができます。
乳酸は脳細胞にある「SIRT1」(長寿遺伝子・若返り遺伝子)のスイッチを押すことで
細胞内のメッセンジャーを動かし、脳の記憶センター(海馬)にあるBDNFの生産スイッチを稼働させる働きがあるのです。
有酸素運動と筋トレの違いを整理すると、以下のようになります。
有酸素運動
・脳内BDNFは運動直後に急激に増加する
・エビデンスが圧倒的に多い
・脳への血流量が増加するため脳がすぐに活性化する
筋トレ
・筋肉量の増加に比例して脳内BDNFが増加する
・70%RM以上(ややキツいと感じる強度)でBDNFが増加する(運動後1時間後)※参考
・長期的な底上げ効果があるのでBDNFの出やすい体質をつくることができる
以上のように、有酸素運動は即時的な効果が期待できる一方で、筋トレは中・長期的な効果が期待できます。
つまり、それぞれのメリットが異なるので
両方行うことが一番賢い選択ということになります。
BDNFを増やす筋トレ戦略

脳内BDNFを増加させるためには、適切な強度と種目選びが必要です。
ここでは具体的なプログラムについてお伝えします。
・70~80%RM(ややキツいと感じる強度)を選択する
→BDNFを増加させるためには筋肉への刺激を増やすことが必要です。60%程度ではBDNFの増加に効果がなかったとされています。
・スクワットやデッドリフト、ベンチプレスなどの多関節種目を選択する
→一度の動作で多くの関節を動かせる種目を多関節種目と言います。
BDNFを増加させるためには大きな筋肉へ刺激を行う必要があります。大きな筋肉は、太ももやお尻、背中、胸といった部分です。
腕立て伏せや懸垂も良い種目です。
・1つの種目につき3~4セットが目安
→トレーニングのボリュームと筋肥大が比例するように、複数セットを行う方がBDNFの増加にも効果的です。
・回数は1セットにつき、6~10回が目安
→70%RM以上の負荷で行うと、必然的に回数は6~10回が目安となります。
・セット間のインターバルは120~180秒が目安
→セット間のインターバルは、120秒以上しっかりととることで筋肥大を促すことができます。
60秒以下の短いインターバルは、個人的にはあまりオススメしません。(例外あり)
疲労によって適切な強度・回数によるトレーニングのボリュームが保てなくなると、
筋肥大に必要な「YAPタンパク質」の反応が弱くなってしまうため、
中・長期的な筋トレによるBDNFの産生にとってはデメリットになります。
YAPタンパク質」は、強い物理的張力(重いウエイトや高強度に耐える力) に反応するため
インターバルは短すぎるよりは、しっかりとるべきです。
ただし、短いインターバルは乳酸を増加させるためには非常に有効です。
また、コチラの記事で紹介しているように、
スーパーセット法やドロップセット法といった手法を行う場合はこの限りではありません。
・上記を週に2~3回行う
→基本的には週あたりのボリュームが多い方が筋肥大にとって有効です。最低でも週に2回の頻度でトレーニングを行うようにしましょう。
まとめ
今回は、脳を若返らせるための方法として、
有酸素運動のほかに、筋トレをおこなうことのメリットを脳内BDNFを増加させる理由と関連づけてお伝えしてきました。
筋肉を刺激することが、身体の変化だけでなく
脳にまで影響をもたらすのは驚きですよね。
今回の内容を是非、ご自身のトレーニングに取り入れてみてはいかがでしょうか。
最後までご覧頂きありがとうございました。
また次回の記事でお会いしましょう。
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